『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』大沢在昌ほか

小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所

小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所

プレイボーイで連載されたミステリ作家によるこち亀トリビュート作品集。監修が日本推理作家協会というのもなかなか凄い。一つずつちょこっと。


『幼な馴染』大沢在昌
自キャラを絡ませる王道パターンだが、特になんてことのない話。一発目としては無難でいいかもしれないが。


『池袋⇔亀有エクスプレス』石田衣良
両津がマコトに依頼を、という話。章間をこち亀オリジナルマークで区切ってるのが良かったくらいで、ITに詳しくない両津というのもおかしいし、このくらい依頼しなくても何とかなるだろうし、どうもうまくない。


『キング・タイガー』今野敏
警視庁を退官した人物が老後の趣味としてのプラモデルを通じて、モデラーとしての両津を見せていく。これは良く出来ててちょっとじーんとくる。今野敏は手出したことないけど、ちょっと興味がわいた。


『一杯の賭け蕎麦 ―花咲慎一郎、両津勘吉に遭遇す―』柴田よしき
大沢と同じ、自キャラと両津を絡ませるパターンだが、話はこちらの方が良く出来ている。両津の行動に荒唐無稽ながらも筋が通ったところを見せ、好人物として描きつつ、自キャラもちょっと頑張るというバランスの取り具合が絶妙。


ぬらりひょんの褌』京極夏彦
いつものパターンと同じく、頭にぬらりひょん画が挿入されている。主人公に部長を持ってくるという変わったパターン。ところどころに入ってくる原作トリビアみたいなのが妙に細かいと思ったら、京極は全巻持ってるらしい。
唯一、ミステリをやっているのが好印象。京極シリーズファンへのサービスも忘れず、こち亀ファンにも面白い関係を見せつつ、さらに密室を絡ませ、とよく出来た話。


『決闘、二対三!の巻』逢坂剛
他の短編はなんてことない話ながらも、軽くまとめてる作家としての力を感じたのだが、これはどうも…。読みにくい気さえするし、両津のキャラ、行動がおかしい。


『目指せ乱歩賞!』東野圭吾
最後を意識して、上手くまとめてきたと思う。シリーズキャラがほとんど居ないからかどうかはわからないが、自キャラは出さず、両津を主人公としている。フリからオチまでいろいろ考えて書いたんだろうなぁ。


今野、柴田、京極が良く出来てて、大沢、石田、東野が無難にまとめて、逢坂がイマイチ、という具合。軽く読める短編集としてなかなか良く出来てたと思う。次はゴルゴでハードボイルド作家にやって欲しい。